近年、建設現場で話題を集めているのが「低炭素型コンクリート」です。
国土交通省の脱炭素アクションプランを追い風に、全国の公共工事でもいよいよ本格導入が進み始めています。
脱炭素アクションプランとは?
国土交通省でも、低炭素型コンクリートの利用拡大が進んでいます。
2025年4月21日、国交省は「土木工事の脱炭素アクションプラン」を公表しました。このプランは、建設現場のカーボンニュートラル実現に向けた具体的なロードマップと施策をまとめたものです。
※出典1より抜粋
本プランでは、国土交通省の発注する土木工事におけるCO2排出の過程に応じた3つのリーディング施策を設定し、そのロードマップがまとめられました。
なぜ脱炭素アクションプランが注目されるのか?
前段として、なぜこれほどまでに本プランが注目されるのか?3つの要因を解説します。
- 法改正を背景とした抜本的な転換
2024年6月、公共工事品質確保促進法(いわゆる品確法)改正されました。これにより、発注者は価格や工期だけでなく、脱炭素化への寄与も考慮して資材や機械を選定する責務を負うこととなり、本プランは法的な裏付けを持つ包括的な取り組みと言えるでしょう。 - 具体的なロードマップとインセンティブ
これまで、各地方整備局による試行工事が発注されておりましたが、本プランは段階的な目標と施策が明示されました。 - スコープ3(間接排出)まで対象を拡大
建設分野におけるCO2排出削減の取り組みは建設現場からの直接排出について述べられることが多かった一方、本プランでは材料や製品の調達・製造過程で発生する間接的なCO₂排出まで対象が広がりました。
また、インフラ分野に関わるCO2排出は「建設段階」「インフラの供与段階」「建築施設の利用段階」の3つのフェーズに大別されました。公共施設の供用段階と建築の供与段階は取り組みが行われ来た一方、「建設段階」においては民間にゆだねられてきました。
「脱炭素アクションプラン」では、「建設段階」を発注者の立場から強力に後押しする施策となっています。
※出典1中の図より高見澤が編集
3つのリーディング施策とロードマップ
脱炭素アクションプランでは、リーディング施策として3つの柱が打ち出されました。
CO2排出の過程施工者が建設現場で排出する「スコープ1」と「スコープ2」だけではなく、材料や製品の調達など製造等の過程で、工事業者以外が発生する間接的なCO2排出である「スコープ3」が考慮されました。
- 建設機械の脱炭素化(スコープ1・2)
電動建設機械や燃費性能の高い機械の導入促進、バイオ燃料・合成燃料の活用支援など。 - コンクリートの脱炭素化(スコープ3)
低炭素型コンクリートの活用拡大、調達段階からのCO₂排出削減。 - その他建設技術の脱炭素化
新技術の開発・導入や、ICT施工の推進など。
これら3つのリーディング施策とそのロードマップが下図のように打ち出されました。
3つのリーディング施策
※出典1中の図より高見澤が編集
3つのリーディング施策とロードマップ
※出典1中の図より高見澤が編集
このように段階的に施策を進めることで、脱炭素化の推進が図られています。
低炭素型コンクリートの活用
ロードマップの2つ目の柱としてコンクリートの脱炭素化が示されました。
背景として、セメント製造時に大量のCO₂が排出することから、代替材料の活用や吸収型技術の導入で間接排出(スコープ3)を削減しコンクリート製造にかかわるCO₂の削減が狙いです。2つの挙げられています。
- セメント代替材料の使用等によるCO₂排出削減
セメント混合割合を45%以下とし、高炉スラグ微粉末に置き換えなどが検討されています。
これまで国土交通省より全国で51件の低炭素型コンクリート試行工事が発注されており、低炭素型コンクリートの取り組みが広い地域に普及しています。また、価格面では、半数近くが市場価格以下(3,000円/t-CO2未満)であることが分かっています。出典2
これらを踏まえ、ロードマップでは2030年までに低炭素型コンクリートの使用原則化が打ち出されています。 - CO₂吸収源増
工場排ガスを用いて養生することで排ガス中に含まれるCO₂をコンクリートに固定するなどが検討されています。CO₂固定化の技術は2030年までに技術開発・供給体制・費用対効果等を検証することが打ち出されています。
コンクリートの脱炭素化とロードマップ
※出典1中の図より高見澤が編集
低炭素型コンクリート「Locacon」
高見澤が製造する流し込み製品は全て低炭素型コンクリート「Locacon」です。
低炭素型コンクリート「Locacon」は、コンクリート中に使用するセメントを製鉄所から排出される高炉スラグ微粉末で置き換え、セメント使用量を減らすことでCO₂排出量の大幅な削減を実現しました。
セメント置換率は、国土交通省の指標55%を大きく上回る最大60%です。
これにより従来の全てセメントで製造する製品と比較しCO2が58%削減できます。
具体的な例として当社の道路用L型擁壁「ハイパーロードL型」H1000Aを100m施工した場合のCO2削減量を試算した場合
約2,400kgのCO2が削減できます。
これはマイカー通勤2年間やめた場合のCO2量相当となるため、非常に大きな削減効果が見込めます。
引用・出展
出典1:国土交通省「国土交通省土木工事の脱炭素アクションプランを公表しました!~建設現場のカーボンニュートラルに向けて~」
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001200.html
出典2:国土交通省「低炭素型コンクリートの活用が全国的に拡大中!~公共工事でのカーボンニュートラルに資する製品の積極的な活用~」
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001188.html