Basic Knowledge/ 土木工事のキソ知識
プレキャストコンクリート
プレキャストコンクリートのメリット
1.安定した品質
- 生コンクリートの長距離運搬がないため、コンクリートの品質が均一で安定します
- 現場での天候に左右されないため、品質のばらつきが少なくなります
- より精度の高い鋼製型枠を使用できるため、仕上がりの寸法精度が高まります
2.工期の短縮
- 現場でのコンクリート打設や養生の時間が不要なため、作業効率が向上します
- 工場での製造と現場での基礎工事などを並行して進めることができるため、全体の工期を大幅に短縮できます
3.安全性向上
- 現場での高所作業や危険なコンクリート打設作業が減り、工場内で管理された環境で作業を行うため、労働災害のリスクが低減します
4.コスト削減
- 工期短縮による人件費の削減や、型枠の再利用、材料の無駄の削減などにより、トータルコストが削減される場合があります
- 特に、繰り返し同じ部材を大量に生産する場合に経済的です
製造の流れ
振動締固め工法の製造方法は、一般的な現場打コンクリートと同様に、型枠に生コンを打設し硬化、脱型を行います。
現場打と大きく異なるのは高温蒸気で養生することで、脱型までの期間を短縮できます
工程の流れ
- 型枠清掃と鉄筋配置
鋼製の型枠をしっかりと清掃し、剥離剤(※1)を塗布します。鉄筋を製品に合わせた形に組立て、型枠の中に配置します。
※1:コンクリートが型枠や金型に付着するのを防ぎ、製品をスムーズに取り外すために使用される薬剤や材料のことです。 - 型枠組立
開いていた型枠を隙間がないようボルトやクランプを締めます。 - 生コン投入
工場内のプラントで所定の材料を計量、ミキサーに投入し、均一になるように練り混ぜます。生コンを型枠に投入後、型枠に振動をかけて締固めを行います、脱泡を確認しながら、空隙がなく均一にいきわたるように注意します。 - 養生
養生層へ移動させ、高温蒸気で養生することで硬化させます。一般的には最高温度65°Cの常圧蒸気養生を行い、翌日脱型します。コンクリート製品は型枠の使用効率が上がります。
脱型後、ストックヤードで14日以上露天に置き、出荷します。
構造による区別
プレキャストコンクリートも現場打ちコンクリートと同様に下記の3点に大別されます。
- 鉄筋コンクリート
- 無筋コンクリート
- プレストレストコンクリート
基本的な特徴は生コンクリートに記載したためこちらでは割愛します。
この他、プレキャストコンクリートでは、成型方法、養生などの製造方法により区分されています。
成型方法
振動締固め
- 生コンを型枠内に投入し、型枠に振動を与えて締め固める方法です
- 側溝や擁壁など多くの製品が振動締固めで製造されています
振動・加圧締固め(即時脱型式)
- 超硬練り(水量の少ない、流動性のない)コンクリートを型枠に投入し振動と加圧によって締め固めて成型・脱型する方法です
- 脱型が即時に行えるため、生産効率に非常に優れます
- 振動と加圧によって成型するため、複雑な形状は難しく小型ブロックなどに用いられます
- 当社ではDC製品と呼んでおり、耐久性にも優れる工法です
遠心力締固め
- 生コンを筒状の型枠に投入し、型枠を遠心機で高速回転させ、遠心力により成型する方法です
- 遠心力を用いるためコンクリート中の余分な水分や空気がなくなるため、緻密で高い強度を持ち、なめらかな表面となります
- 主に電柱や、コンクリート杭などの製造に用いられます。当社ではDC製品と呼んでおり、耐久性にも優れる工法です
加圧締固め
- 生コンを型枠に投入後、圧力をかけて締固めます
- 水分がなくなるため強度や耐久性が向上します
- 主にコンクリート矢板などの製造に用いられます
身近なプレキャストコンクリート
側溝
- 主に道路や敷地の雨水を排水する目的で設置される側溝はもっとも身近なプレキャストコンクリートといえるかと思います
- U字側溝や落とし蓋側溝、水路勾配を変化させられる自由勾配側溝などの種類があります
- 側溝天端に連続したスリットを設け、集水能力を向上させたものや天端露出が少なく景観に配慮したものなどものあり、快適な街づくりのため日々改善が重ねられています
舗装・境界ブロック類
- 縁石も身近なプレキャストコンクリートの1つです
- 道路と歩道を分ける歩車道境界ブロックは道路利用者がしっかりと歩道・道路を識別できるだけでなく、車がぶつかっても簡単には倒れないよう一定の深さが地中に埋められており、交通事故の減少に役立っています
- インターロッキングブロックは舗石の代替品として発展しました
- ブロック表面が着色されているため、景観性に優れるだけでなく、歩道・車道・自転車道などの区分を明確にし、視認性の向上による交通安全の向上にも寄与しています
- 近年では緑化ができるブロックや保水性を持つものなどの高機能製品も増えています
擁壁類
- L型擁壁は断面の形がLの形状をしており、土を切り取った「ガケ」や盛土を安定させるためのコンクリート製の壁です
- 道路工事や住宅の敷地を平らにするために用いられます
- 積みブロックはガケなどが崩れないようにする目的で古くから使用されてきた、石積間知石(いしづみけんちいし)をコンクリート製品にしたもので、主に道路、河川、宅地造成などに使われています
- 従来はブロックを人の手で積んでおりましたが、近年の高齢化・人手不足により重機で施工できる大型化された製品が増えてきています
ボックスカルバート
- 地中につくられる水路や通路を確保する箱型形状の製品です
- 地中に埋まっているため、目にする機会は少ないかもしれません
- 雨水・下水の排水や、車や人用の通路としても用いられることもあります
水路
- 農業用水や排水に使われる川などの水源から離れた場所に引くために人工的に造られた水路が用水路です
- ベンチフリュームは農業用の用排水路として利用されています
- "アゴ"の上に次の製品を重ねていくため、止水性の向上が期待できます
護岸ブロック
- 河川堤防の法面を保護するブロックです
- 斜面の勾配が45度よりも緩やかな場合は「張り」、急な場合は「積み」と呼びます
- 法面勾配や河川の流速の速さなどによってブロックの形状や連結方法が選定されます
貯水槽
- 防火用水、飲料水などの各種用水を貯蔵・貯留するための施設の構成部材です
- 雨水貯留施設は、洪水の原因となる雨水を一時的に貯留して、河川へ少しずつ流す施設です
- 近年のゲリラ豪雨に対応し、洪水や都市浸水を防ぐため設置の重要性が増しています
- 防火水槽は地下に消火用の水をためるための耐震性のある鉄筋コンクリート水槽です
- 消火活動に必要な水を確保する重要な施設で、消防法に基づく「消防水利の基準」で定められた基準を満たす必要があります