コンクリート製品は、毎日の生活やインフラを支える大事な存在。だからこそ、品質管理は欠かせません。
今回は、コンクリート小布施工場で品質管理を担当するFさん(26歳)から試験方法を紹介してもらいました。
製品が世に出る前にどんな試験をしているのか、現場のリアルをお届けします。
Fさん(26)
長野県長野市出身。高見澤に入社後、小布施工場に配属。
週末はゴルフやスノーボードなどアクティブに過ごすことが多いです!
生コン検査
プレキャストコンクリート製品は、生コンクリートを固めて作られます。
つまり、生コンの品質=製品の品質。だからこそ、Fさんの朝は生コン検査から始まります。

スランプ検査
「スランプ」とは、生コンの"柔らかさ"のことです。

<検査の流れ>
1.円錐形の「スランプコーン」に生コンを3回に分けて入れる
2.各層を突き棒で突く
3.コーンを引き抜き、生コンの高さ(スランプ)を測定
Fさん
「柔らかすぎると品質が落ちるし、硬すぎると型に流し込みにくくなる。ちょうどいい"柔らかさ"が大事です。」
空気量検査

<検査の流れ>
1.容器に生コンを3回に分けて入れ、各層を付き棒でつき、容器の外側を叩く
2.表面を平らにする
3.蓋をし、空気量を測定
ーーコンクリート内の空気量も決まっているのが驚きでした!なぜ空気量を測定するんでしょうか?
Fさん
「長野県のような寒冷地では、コンクリート内部の水分が凍って膨張することがあるんです。それが凍害。
空気を適度に入れておくと、膨張した水分の"逃げ道"ができて、凍害が起こりづらくなります。」
材料温度・外気温の測定

生コンの材料温度は、外気温より5℃程度高い状態です。
特に夏場は要注意だそう。
Fさん
「材料温度が高すぎると、コンクリートの硬化に悪影響がでてしまう。だから骨材に冷水をかけたり、工夫しています。」
ーー細かい調整が品質を左右するんですね。
生コンプラントにて調整

小布施工場内にある生コンプラントに向かいます。
生コン検査の結果から微調整を行います。
Fさん
「その日の気温や作る製品に合わせて微調整するのが腕の見せどころ。
記録もしっかり残して、確認できるようにしてます。」
圧縮試験
生コン検査はコンクリートが固まる前に行いましたが、コンクリートが固まったあとに行う試験が圧縮試験です。
圧縮試験では硬化後のコンクリートを圧縮させ、圧縮強度を測ります。
テストピース採取

圧縮試験用のサンプル(テストピース)を作成します。
<採取の流れ>
1.型枠に生コンを詰める
2. 2回に分けて入れ、各層を突き棒で突く
3.室内で前置き養生
蒸気養生

通常の製品と同様、蒸気養生槽へ設置します。
蒸気養生をかけ硬化後、翌日脱型します。
脱型

蒸気養生により硬化させた翌日、型枠から外します。
型の下から空気を入れると…スポッ!
型枠をばらすと思っておりましたが、こういう形の型枠もあるんですね!(ばらけるタイプもあります)
養生

テストピースは合計4本作成し、3本は露天に置いておき、1本は水中に置いておきます。
養生期間は14日間です。これは、コンクリートは硬化後に強度が伸びていく特性があり、14日間経過することで所程の強度に達するためです。
ーー露天におくものと、水中に置くものがあるのはなぜですか?
Fさん
「圧縮強度はテストピースの乾湿状態によって変化する場合があるからです。
試験値としては気中養生3本の平均値を使いますが、湿潤状態のものを確認用として作成しています。」
重量測定

テストピースの重量を測定します。
圧縮試験

圧縮試験機にセット。
一定の速度で力をかけていき、所定の強度があることを確認します。
工場内見回り ー現場との"対話"が品質を作るー

検査室での仕事だけでは終わりません。Fさんの大切な仕事のひとつが、工場内の見回りです。
製造工程をチェックしながら、職人さんたちとコミュニケーションを取ります

Fさん
「製造される皆さんの意見を伺いながら、品質を守りつつ作業性も向上させていく。
このバランスを取るのが、品質管理の大事な仕事です。」
Fさんが見据える未来——"守る"から"創る"へ
最後に、Fさんに今後の展望を聞いてみました。

Fさん
「今は品質を"守る"ことに集中していますが、将来的には新素材、新技術を取り入れていける人材になりたい。
直近の目標は、やっぱり”脱炭素”。
高見澤の低炭素型コンクリート"Locacon(ロカコン)" をもっと良くしていきたいと思っています。」
普段は目に見えないコンクリートの品質管理。
その裏には、Fさんのような"品質の守り人"の地道な努力と、未来を見据えた熱い想いがありました。
「地味だけど、皆さんの暮らしに直結する仕事。大きな責任とやりがいを感じています」
そんな誇りと覚悟を胸に、今日もFさんは現場に立っています。