国土交通省では、コンクリート工事の生産性を高めるために、プレキャストコンクリートの活用を広げる取り組みが進められています。
こうした流れの中で、令和7年度には「VFMによるコンクリート構造物の工法比較に関する試行要領(案)」(以下、VFM施行要領(案))が改訂されました。さらに、令和8年度からは直轄工事での適用が本格的に始まる予定です。
本記事では、国土交通省が進めている取り組みと、VFMの考え方についてわかりやすく整理していきます!
なぜコンクリート生産性の向上が必要なのか
コンクリート工事は、道路・河川・下水道など、社会インフラを支える重要な工事です。
これまでコンクリート工事は、現場打ちと呼ばれる方法が一般的でした。これは、生コンクリートを現場まで運び、そこで型枠に流し込み、固める方法です。
長年使われてきた工法ですが、近年は人口減少や作業員の高齢化が進み、現場打ちにはさまざまな課題が目立つようになってきました。
現場打ちの主な課題
- 手間が大きい
「型枠の設置・鉄筋の組立・コンクリートの打設・養生・型枠の解体」など必要な工程が多く、作業負担が大きくなります。 - 品質が安定しにくい
天候や気温、現場条件の違いによって調整が必要となるため、仕上がりや品質に差が出やすくなります。 - 工期が長くなりやすい
複数の工程が必要なことに加え、コンクリートの養生期間(効果までの時間)が2週間ほど必要となることから、工期が長くなりやすい。

※資料1 P9より抜粋
そして、これらの課題は、人手不足が進む中でさらに大きな問題になっています。
作業員の確保が難しくなると、手間の多さや工程の長さがそのまま現場の負担につながるためです。
このような背景から、国土交通省ではコンクリート工事の生産性向上に向けて、プレキャストコンクリートの活用を進めています。
プレキャストコンクリート採用にかかわる課題
プレキャストコンクリートは、工場であらかじめ製品を製造し、硬化後の部材を現場に運んで組み立てる工法です。
現場での作業を減らせるので、手間の軽減、工程管理のしやすさ、品質の安定といったメリットがあります。

- コスト
プレキャストコンクリートは現場打ちと比べ価格が高くなりやすく、特に大型の構造物では価格差のため採用されないことが多かった。 - 制度
長年、現場打ちが主流だったため、プレキャストコンクリートの適用条件や判断基準などの制度面での整備が十分ではない。 - 現場条件への適用
運搬ルート、施工スペース、揚重機の条件などの現場制約によってはプレキャストコンクリートをそのまま適用しづらい場合があった。
現場打ちとプレキャストコンクリートの比較
| 現場打ちコンクリート |
プレキャストコンクリート |
|
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|
| メリット |
現場条件に合わせやすい |
工程が少なく、手間が小さい 品質が均一 工期短縮に寄与 |
| デメリット |
工程が多く、手間が大きい 品質にばらつきが出やすい 工期が長くなりやすい →人手不足・高齢化により課題が明確化 |
コストが高くなる場合がある(特に大型構造物) プレキャストコンクリート用の制度整備が不十分 形状や寸法の自由度が低い |
特に価格面での課題は大きく、これまで採用が進みにくい状況がありました。
このため、コストと生産性向上を総合的に比較・判断する仕組みとしてVFM(Value for Money)の考え方が提唱されました。
VFMとは?
今回のキーワードのひとつがVFMです。
VFMは Value for Money の略で、支払(Money)に対して最も価値(Value)の高いサービスを供給するという考え方です。

※資料2 P30より抜粋
従来のコスト比較では、単純に工事に関わる金額だけを比較していました。
しかし、VFMではコスト評価に加え
・省人化効果(少ない人数・手間でできること)
・働き方改革への寄与
・安全性向上
・第三者への影響(通行止め日数など)
・出来栄え
などを総合的に比較し最適な工法を選定します。
令和7年度までの取り組み
これまでの流れ
国土交通省では、プレキャスト工法の活用に向けて、段階的に検討が進められてきました。
令和5年資料では、プレキャストコンクリートの活用に向けた流れが示されており、小型・中型構造物では採用が進む一方、大型構造物ではコスト面の課題が大きく、VFMの考え方を取り入れた工法比較が進められることが示されました。

※資料4 P9より抜粋
令和6年には、VFM施行要領(案)が公表され、これまで整理されていなかったVFMの評価方法が体系化されました。
続く令和7年には、試行要領(案)が改正され、評価項目の見直しなどが行われています。
プレキャストコンクリート採用への動き
特車で運搬可能な小型・中型のコンクリート構造物については原則としてプレキャストコンクリートを使用する方針が示されました。
※資料5 P22より抜粋
一方、大型構造物ではコスト面の課題が大きく、VFMの考え方を取り入れた工法比較が進められ
令和6年に発表されたVFM施行要領(案)では、プレキャストコンクリートと現場打ちコンクリートの標準的な工法選定フローも示されました。
これにより従来よりもプレキャストを採用しやすい環境が整いつつあります。

※資料3 P9抜粋(赤枠は高見澤で加筆)
令和7年度には、改正後の試行要領を用いて過年度業務の再試算も行われ、特殊な現場条件を除けば、いずれもプレキャストコンクリートが採用される結果となりました。
こうした検証を踏まえ、実施要領(案)が策定され、令和8年度の設計業務から適用される予定です。
令和8年度からの主な変更点
令和8年度の改定案では、プレキャストコンクリートをさらに使いやすくする内容が示される予定です。

※資料2 P45抜粋
内空断面積35m²以下の構造物で土かぶり3m以下のものは原則プレキャストを採用と明記され
R7年までは内空断面積12.25m2までの一体化した規格とされていましたが適用が拡大する見込みです。
まとめ
国交省は、コンクリート工事の生産性向上に向けて、プレキャストコンクリートの原則適用範囲を拡大する方向を示しました。
特にボックスカルバートでは、大型構造物でもプレキャストを原則適用する流れが明確になりつつあります。
プレキャストコンクリートの適用拡大は、人手不足への対応や現場の負担軽減につながる大きな一歩となるでしょう
引用・出展
資料1:国土交通省「コンクリート生産性向上検討協議会(第15回・令和8年2月25日)|資料1 これまでの主な議論について」
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000167.html
資料2:国土交通省「コンクリート生産性向上検討協議会(第15回・令和8年2月25日)|資料2-2 規格の標準化・要素技術の一般化及び全体最適化の検討(大型構造物への適用に向けたVFM・規格の標準化の検討)」
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000167.html
資料3:国土交通省「VFMによるコンクリート構造物の工法比較に関する試行要領(案)令和7年8月 国土交通省 大臣官房技術調査課 」
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001906702.pdf
資料4:国土交通省「コンクリート生産性向上検討協議会(第12回・令和5年2月9日)|資料2-2 要素技術の一般化・企画の標準化の検討(全体最適の導入に関する検討、民間審査制度の活用)」
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000104.html
資料5:国土交通省「コンクリート生産性向上検討協議会(第9回・令和2年7月31日)|資料2 要素技術の一般化・規格の標準化の検討」
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000079.html
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